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2017年1月10日Column今週の余談

もしも、海外進出した製造業が、国内に戻ってきたら・・・。

つい先日、アメリカのトランプ次期大統領が、Twitterでトヨタ自動車がメキシコに建設予定の新工場について「アメリカに建設しろ、さもないと高い関税を支払うことになる」と警告したそうです。それ以前にも自国の大手自動車会社フォードにも同じような攻撃を展開。ついにフォードはメキシコでの工場建設を中止することを決定したところでした。どうやら、トランプ次期大統領の国内への製造業回帰を本気で決意しているのは間違いないようです。ですが、これが本当にアメリカ国内の雇用と所得を増やすと同時に、景気をよくすることになるのでしょうか。経済のことにはまったくと言っていいほどに疎い私でも疑問に思うところが多々あります。

そもそも、製造業というのは常に技術の進歩とともに生産効率を上げることが生き残りと成長の要諦です。その意味で、アメリカに限らず日本や欧州各国の製造業が、安い労働力を利用しようと海外へ工場移転するのは、道理にかなったものです。また、グローバル化というのはアメリカによって主導してきたものですが、それはきっかけにすぎません。経済のグローバル化は、時代の必然の流れであり、この大きな波を意図して変えることはできないように思います。

もしも、アメリカ国内にすべての製造業の工場が戻ってきたと仮定すると、多くの雇用が生まれることは確かでしょう。しかし同時に、アメリカ国民は、メキシコの労働者並の低賃金での労働を強いられることになりはしないでしょうか。さもなくば、製品の値上げを余儀なくされることになります。また、多くの有能な科学者や技術者のいるアメリカといえども、単独で新しい製品を開発し高品質を維持した生産を続けることは不可能です。そうなると、結局のところ良い製品も作り出せなくなります。また、工場が立ち去ったあとのメキシコでは、不況の嵐が訪れることになり、それはメキシコという市場が小さくなることを意味します。

アメリカ国内での需要も減り、メキシコその他の市場も縮小するとなると単なる不況を超えて「大恐慌」になる危険をはらんでいるように思えてなりません。

ひるがえって日本でも同じことになるでしょう。もしも今、日本の製造業の海外工場が国内へ戻ってきたら。大手企業に素材や部品を供給している中小製造業にとっては嬉しいことになりまそうですが、それは間違いのように思います。例えば、ベトナムやミャンマーで縫製しているユニクロ商品を国内で生産することになれば、ユニクロ商品は大幅な値上げをするか、雇用する国内労働者をベトナムやミャンマーと同程度の賃金に抑制しない限りたち行かなくなるように思います。いずれにしても、ユニクロは国内販売はもちろん、海外での販売も縮小を余儀なくなれるでしょう。すべての製造業がそうなると、結果的に日本そのものが不況に陥ります。

グローバル化した経済の中では、それぞれの国や地域で得意とする分野で努力し、世界の人々と協力しながらより良い製品をつくること。そうやって国境を越えた成長を模索しないかぎり、自国の成長を目論むことは無理なように思います。日本の場合、日本人の得意技ともいえる細部にまで気を遣い丁寧につくる職人技的な技術を磨くとともに、AI(人工知能)とロボットを融合した新たな精密な製品を開発し生産する。中小製造業にあっては、これらの精密製品を支える高度な加工技術やより軽量・精密・超硬な部品を供給する技術に磨きをかけることで、新たな需要を創り出すことが大事だと思います。

いずれにしましても、アメリカであれ日本であれ、おのおのの得意分野のモノづくり(製造業)のイノベーションによって新たな雇用を生み出すことで成長をしていくことが重要なのだと思います。

 

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