トップ > マーケティング戦略なき営業は、モノづくり企業では通用しない(前編)

2017年1月31日マーケティング営業

マーケティング戦略なき営業は、モノづくり企業では通用しない(前編)

売れる営業と売れない営業 その違いは何処にある?
モノづくり(製造)企業に限らずですが、営業という仕事は不思議なことが多くあります。その中で、私が一番おもしろい。と思うのが、各営業パーソンによって売上成績がまったく異なることです。もっとも、みなさんにとっては不思議でも何でもないのかも知れませんが・・・。でも、よく考えてみてください。経営者にとっては、凄く重要なことが、その理由の中に隠されています。

何が不思議かと言いますと、同じ会社に所属する営業パーソンは、みんな同じ製品を売っていますよね。A社の営業が、ライバルB社の製品を売ることはないでしょう。商社ですとか販売代理店だったとしても、自社で取り扱っている製品を売ることに違いないわけです。いずれにしても、同じ会社に所属する営業は、何から何まで同じ条件です。基本的には・・・。では何故、営業パーソンの違いでこんなにも売上成績が違うのでしょう。

その違いの理由を、私の営業時代の体験を通して解き明かします。

若い頃に私は、印刷業界の営業として転職しました。それ以前は、印刷業界の制作現場でデザイナーとして働いていました。独立を考えていた私は、営業経験を積もうと転職したわけです。転職した印刷会社には、13名の営業パーソンが在籍していました。ですので、私は14番目の新人営業です。
印刷業というのは、完全な受注形態です。そして、だいたいはルート営業が基本です。とはいえ、営業ですので毎月の売上ノルマというのがあります。最初の3ヵ月は、先輩営業に同行して顧客先を訪問。その会社なりの営業要領(各顧客ごとの仕事の内容や見積方法など)を覚えることでした。ですが私は、どのようにして、営業各人が受注してノルマを達成しているか。そこに視点を置いて同行していました。
そこで、各人の営業成績を調べていくと、営業によって千差万別。一番多く売り上げている営業が3,000万円とすると、最低の営業は400万円にも満たない。そして平均では、1,000万円程度です。そんな具合でした。最低の人は論外として、一体、何が違うのだろうと各人の行動を見ていると。おもしろいことを発見しました。
例えば、同じノルマ1,000万円の人でも、余裕で上げている人がいるかと思うと、毎日、朝一番から夜中まで、それこそ必死で動き回ってノルマを達成している人もいます。その違いを分析したわけです。

すると、その違いが見えてきました。答えは簡単でした。受け持っている顧客が違うからです。印刷というのは、冊子類かチラシ類といった形式・サイズ・カラー刷りかモノクロ刷りといった色数・印刷部数によって、金額が大きく変動します。例えば、全く同じ仕様でも、1万部と100万部では、100倍とは言いませんが少なくとも20倍以上の違いがあります。でも、その受注と制作に掛かる手間(労力)は同じです。
楽をしてノルマを上げている営業は、ずいぶんと印刷部数の多い仕事ばかりを受注していました。だから、楽ちんでノルマを達成していたわけです。ですが、朝から夜中まで、必死になってノルマを何とか達成していた営業は、少額の印刷物ばかりを受注していたのです。だから、大変だったのです。
楽していた営業は、毎月、わずか2つの案件でノルマを達成していました。しかも、競合も少なかったので、ほぼ希望通りの価格で受注していました。なので、売上額も粗利益も抜群に良かったのです。一方、苦労してノルマ達成していた営業は、その20倍の40件くらいの量です。しかも、競合先も多かったので相見積もりばかりを、何度も提出させられます。結果、受注するには、顧客の値引き要請を受け入れるしかありせん。さらに、お客様は品質や納期にはこだわります。それが、発注側の担当者の責務ですので当然です。

この違いは、単に受け持っている顧客先が違うからです。決して、能力の違いではありません(まあ、確かに前者の営業パーソンは、要領のいいクレバーなヤツではありましたが・・・)。
同じ会社に所属しているわけですから、デザイン・印刷の仕上がり品質は同じです。なのに、営業個々で成績も違う。働き具合も違う。もちろん、売上手当が加算されますので給料だって違ってきます。なんだか不公平ですよね。

楽して売れる、苦労しても売れない。その違いは顧客(市場)にある
そのことに気がついた私は、自分の行く末を想像しました。たぶん、新人だということで小さな顧客をいくつか担当させられるのだろうと。それで、一通りの苦労で一人前に・・・会社は、きっと、そんな思惑をしているハズだと。
『オラ、そんなの嫌だ!』って思った私は、自分の力ひとつで新たな顧客を見つけてやろうと決心しました(それが営業本来の仕事です。それに、将来は独立を考えているわけですから、自力で顧客開拓できる力を培わないと)。

会社で成績の良い営業パーソンの方々は、自分は能力があると自負している方が多いと思います。でも、私に言わせれば、そんなことはありません。みんな同じ人間です。そして、同じ会社の同じ部署に所属しています。能力なんて所詮、五十歩百歩です。

では、その違いは要因は何か。 ただひとつ、受け持つ顧客が違うことだけ。

ここが、重要です。当たり前のことなんですが・・・実は、誰も、そのことに注目していません。とくに経営者の方に注目していただきたいところです。

経営という観点で置きかえましょう。
顧客を市場と見なしてください。すると一目瞭然でしょう。

供給を上回るような需要があり、年々拡大している市場でしたら、釣りでいう入れ食い状態のように、バンバン受注できます(まあ、それなりの技術は必要ですが・・・)。
これが、需要を上回る供給力がり、縮小傾向にあるような市場でしたら・・・言うまでも無く、厳しい競争にさらされながら苦労して受注しなければなりません。どちらが良いかは、一目瞭然です。

つまり、同じ売る(受注する)なら、一定以上の市場規模で、競合が少なく、かつ拡大している市場を選ぶことです。個々の顧客先を選ぶ場合も同じです。
ぐんぐんと成長している顧客先を、重点的に営業をかけるべきです。

市場を見つけ開拓するためにマーケティングを利用する
そのために必要な手立てが、マーケティング戦略です。
マーケティングの要は、自社に有利な市場を見つけことです。マーケティングには、市場を見つけ、狙いを定め、攻め方を特定する方法があります。

それが、STPというものです。
S = セグメンテーション:市場をある要素で分割することです。
T = ターゲティング:細分化した市場を特定することです。
P = ポジショニング:特定した市場の中での立ち位置を決めることです。

単にことばの意味を説明しても分かりにくいですね。引き続き、私の経験をもとに説明したいと思います。(私は、学術的な説明が苦手です)

転職して3ヶ月が過ぎ、ようやく一人で営業するようになりました。ただし、予測していた通り、最初に受け持った顧客先は、受注量の小さな企業ばかり。
これでは、どんなに頑張っても毎月の売上は、500万円が限度です。
そこで私は、自力で新規開拓することにしました。それからは、顧客先へのルート営業もそこそこに、出来るだけ自由な時間をつくって印刷物を発注していそうな企業を、手当たり次第に飛び込み訪問しました。今と違って、当時の飛び込み訪問は、新規開拓の常套手段です。いまでも実施している会社はありますが。
もちろん、世の中、甘くはありません。何処の馬の骨かも分からない私のような営業の相手なんかしてくれません。ですが、私には別の狙いがありました。最初から相手されることなんか考えていません。
私の狙いは、まず一番に、どんな印刷物を、どの程度のロットで発注しているのか。これを知ることが最初の目的です。ですから、訪問する先々で、相手をされなくても受付に顔を出し、営業部門の規模を推し量り、カタログスタンドに陳列している印刷物を拝借しました。
ご存じのように、印刷とひとくちに言いましても、分厚い製品カタログ、会社案内、情報誌、社内報、チラシ類。それに、もっとも小さいものとしては名刺もあります。いろいろな種類があります。その中で私が狙ったのは、一案件あたりの売上額の多い製品カタログや会社案内、情報誌・社内報です。とくに定期刊行物の情報誌・社内報を狙っていました。なぜなら、一度受注すると、毎月決まった量の売上が見込めるからです。次が、製品カタログや会社案内です。一度受注すると毎月とは生きませんが、半年に1回くらいのペースでリピート注文があるからです。
反対に一番狙うべきでないものが、チラシ類です。例えば、新聞折込チラシは、1回あたり、最低でも10万部。通常は30~50万部のロットです。チラシは売上こそ上がるのですが、粗利益率が非常に低いのです。しかも、毎回、競合との間で相見積もりで競争させられます。労多くして実少ない案件です。

それらを片っ端から集めて、すべてのカタログなどを事細かにチェックしました。何を目的にチェックしたかといいますと、実は、どのような業者が作ったかを知るためです。私は、もともと制作現場でデザイン以降の制作工程にたずさわっていました。その経験から印刷物を見て、どのような業者が作ったのかを判断する眼を持っています(もちろん、はずれることもありますが・・・)。
発注元の企業と直接取引している業者には、大まかに広告代理店・広告制作会社・印刷会社と3つの業態があります。広告代理店というのは、代理店というくらいですから、ほぼ、すべての制作作業を外注しています。早い話が、ブローカーです。広告制作会社は、企画・デザインは内製化していますが、それ以降の工程、つまり印刷原版や印刷・加工などは外注です。そして、私が所属していた印刷会社は、一応、企画・デザインから印刷までのすべてを内製化(あくまでも建前です。実際の外注比率は50%以上あります)しています。
それで、私が狙った企業は、カタログや情報誌などを広告代理店に発注している企業です。それ以外は除外しました。

そうやって、該当すると思われる企業に再訪問しました。もちろん、今度は確実に発注担当社に会うためです。もちろん私には、会っていただける秘策がありました。

今日のはここまで・・・・・です。
次回、どういう秘策をもって目指す企業の発注担当者に会ったのか?
マーケティングのSTPが、どこで、どう活かされているのか?
その秘密をお話します。

どうか後半をお楽しみに・・・・・To Be Continue

 

↑